「面白そう」が人生の羅針盤
挑戦に年齢は関係ない

15期生佐山展生さん

Profile

1972年 洛星高等学校卒業(15期)後、京都大学工学部卒業。
帝人、三井銀行(現三井住友銀行)を経て、ユニゾン・キャピタル、GCA、インテグラルを共同設立。インテグラル代表取締役パートナー、スカイマーク代表取締役会長等を歴任。現在、京都大学経営管理大学院特命教授や、学校法人ヴィアトール学園理事などを兼務。

洛星中学・高等学校15期OBで、工業化学の世界から金融業界に転身し、その後ファンドを創設するなど、多岐にわたる経歴を持つ佐山 展生氏に、洛星で野球に打ち込んだ学生時代から社会人としての歩み、そして洛星が育む力の核心についてお話を伺いました。

野球部での経験が教えてくれた「気持ち」の大切さ

佐山さんの人生を語る上で欠かせないのが、洛星での6年間を捧げた野球部での経験です。毎日休みなく、朝7時からも練習と野球に明け暮れ、当時は試験期間中も練習を欠かさないという徹底ぶりでした。当時の野球部の休みは「1月1日から3日まで」のみという、まさに野球一筋の生活を送られていました。この過酷な日々が、体力と気力を養っただけでなく、人生の根幹となる「気持ち」の大切さを教えてくれたといいます。
印象深い思い出として、ご自身が高校3年の夏の大会、当時の優勝候補筆頭だった大谷高校と対戦を挙げてくださいました。試合前のノックを見ても、相手の強さは歴然だったと振り返ります。しかし、試合結果は2-0で洛星の勝利。佐山さんは、この奇跡的な勝利の要因を「気持ちの差」だと語ります。「大谷高校は誰一人洛星に負けるとは思っていなかったでしょうけど、洛星は『最後の試合だ』と無心に野球をしただけでした」。
「人間の能力の差っていうのは、大したことないんです」。この言葉は、勉強においても、社会に出てからも、能力の差以上に気持ちの差が結果を左右するという、佐山さんご自身の経験に裏打ちされた哲学を物語っています。「準々決勝で花園高校に逆転サヨナラ負けしたことは、今でも鮮明に覚えている悔しい思い出です」。

洛星での「文武両道」は生徒が自ら成し遂げるもの

「世にいう受験校の『文武両道』の多くは、実は『学校が文武両道』で、スポーツは別枠で入学させたり、それ以外の受験生は勉強だけに集中しろといわれる。でも洛星の『文武両道』は違う。洛星は『学生が文武両道』なんです」。
他校では勉強のためにスポーツが制限されることも多い中で、洛星ではとことん野球に打ち込むことができたといいます。他の進学校のようにスポーツを犠牲にして勉強だけをするのは勿体なく、若い時にしかできない貴重な経験を失ってしまうと訴えられました。ご自身も、中学・高校の6年間、仲間と共に一つの目標に向かって全力で汗を流し、やりきった経験が、キャリアにおける土台となっていると振り返られました。

人生を拓く羅針盤としての「面白そう」

佐山さんの人生を貫くキーワードは「面白そう」です。
30歳まで「会社人間の模範」として、「言われたことを全力でやり切るサラリーマン・オブ・ザ・イヤーだった」と回顧して微笑む佐山さん。しかし、30歳で「サラリーマンは、頑張ったからといって社長になれるものではない」と悟り、転職が一般的ではなかった時代に「面白そう」という直感で、新聞広告でたまたま見かけたM&Aの世界に飛び込みます。
「成功する確率は5%しかないだろう」と感じながらも行動できたのは、ただ「面白そうやな」と思ったからだと言います。佐山さんは、この「面白そう」という直感の大切さを、受験生や在校生への最も伝えたいメッセージとして強調されました。
「みんなが面白いってやってることはもう面白くない。誰もやってないけど面白いんちゃうか、面白そうやなっていうことに突っ込む気持ちって大事だと思うんですよ」。
チャンスは誰にでも平等に訪れますが、それに気づくには、日頃から「面白そうなものはないかなと思ってキョロキョロと見まわし、アンテナを張ること」が重要だとお話しくださいました。
「何か問題が起こったときや憤りを感じたときほど、むしろチャンスだと捉え、このアンテナをピンと張るんです」。

生きることは「自作自演のドラマ」

佐山さんは、人生を「自作自演のドラマ」と表現します。
「自分の人生の主演は自分自身です。しかし忘れがちなのは、その演じているドラマの脚本も、自分で書けるということなんですよね。『今の人生は面白くない』と文句を言う人がいるとすれば、それは『自分の書いた脚本が面白くない』からに他ならない、面白くないのは自分の責任なんです。その脚本を変えるのは自分自身であり、誰にもコントロールされているわけではないのです。今いる居場所の中で脚本を書き直してもいいし、どうしょうもなかったらその居場所から変えてもいい」と、自ら行動を起こすことの重要性を話してくださいました。

最終ゴールは死ぬ時まで見られない

「楽=幸せ、とは思っていません。楽な人生ではなく、エキサイティングな人生を送りたいんですよね」。
楽な人生を送りたいと思っている人は別ですが、という前置きの後、「ゴールを一つ達成したからと云って、そこに永久安泰な状態で長くいたいというのは、これは面白くない。例えば野球で云うと、草野球でエースで4番を打っていて、『もうこれでいいや』というのか、それとも『メジャーリーグを目指す!』というのか。やっぱり洛星を目指す人・洛星に入った人には、ゴールを一つ達成しても、面白い人生を歩むため、常に目標を更新して上を目指してほしい」と語ってくださいました。
「最終ゴールっていうのは死ぬ時までないと思うんですよ」佐山さんは、笑ってそう仰いました。

小学生・中高生へのメッセージ

最後に、これから洛星を目指す小学生たち、そして今の洛星の生徒たちに向けて、3つのメッセージを贈ってくださいました。

1. ロールモデルは必要ない
「私は、ロールモデルやキャリアプランを考えたことがありません。ロールモデルとは、今見えている世界に存在するものでしかない。今ある世界だけを見るのではなく『まだ誰もしたことがない、面白そうなものないかな』とアンテナを張って、それを見つけて突っ込んできた結果として、今がある。人生の終わりに『ああ面白かった』と思えるような人生を送りたいなら、常に面白そうなものを探しそれに突っ込むような人生を過ごして欲しいです。」

2. いくつになっても「10年後より10才若い」
「68歳の時、オリックスの元会長である宮内さんから年齢を聞かれ答えると、『佐山さん若いな。まだ何でも始められるな』と言われました。83歳の宮内さんから見れば、68歳はまだまだ『何でも始められる ”年齢”』だったのだと気づきました。いくつになっても、10年後から自分を見れば、今のあなたは無茶苦茶若い。もう年をとったなんて思うのは死ぬ直前だけでいいと思います。『いくつになっても10年後より10才若い。』この言葉を胸に、面白そうと思えるものに愚直に突き進んでいってほしいです。」

3. 前人未到の領域に「失敗」は存在しない
「セミナーで、『失敗することに対する恐れはありませんか?』と聞かれたことがあります。そういえばそんなこと考えたことがなかった。すでに誰かがやっている領域では、失敗すれば ”失敗だ” と言われますが、前人未到の領域は、誰もやったことがないのでうまくいかなくても ”失敗” とは言われません。」

佐山さんの言葉は、自由自在に色々な物事に取り組んでいる洛星生、卒業生の姿と重なり合って響くものでした。
これから洛星を目指す受験生や、今まさに洛星で学んでいる学生たちだけでなく今働いている大人たちにも、共通するメッセージだと感じました。

インタビュアー:事務局 田邊篤志