自らを由とする~「自由」を学んだ6年間

61期生上田大智さん

Profile

2018年 洛星高等学校卒業(61期)後、京都大学 文学部卒業。現在、JAXA 研究開発部門 研究戦略部に所属。

国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構(JAXA)で研究戦略部に所属する上田 大智さんは、洛星中学・高等学校の61期生です。芸術やファッションを学んだのち、宇宙という全く異なる分野に飛び込んだ背景には、洛星で培った精神がありました。

「宇宙は人類みんなが見るもの」――ファッションから宇宙へ

大学では美学を専攻し、大学休学中にはファッションデザイン等を学んでいた上田さん。就職活動前に訪れたインドでの体験が、人生の転機となりました。
「ガンジス川からゆっくりと昇る太陽を見たとき、宇宙は誰にとっても共通のものなんだと直感しました。ファッションも宇宙も、言葉が通じなくても、人をつなぐもの。理屈抜きに “宇宙の仕事をしてみたい” と思ったんです。」
そう語る上田さんは、現在、JAXAの研究戦略部で宇宙に関する研究の評価や方針策定に携わっています。
「研究戦略部では、研究者と伴走したり、研究開発のマネジメントを行ったりします。そのため、普段は研究者の方とお話することが多いのですが、昨年は、大阪万博のJAXAブースや筑波宇宙センターの一般公開などで、一般の皆さまに研究に関する説明をする機会にも恵まれました。その際には、宇宙開発に対する世間の期待がいかに大きいかを肌で感じ、改めて襟を正す思いがしたのと共に、やはりロマンがある仕事だなと感じました。入社したばかりなので、日々勉強中ですが、宇宙開発を支える仕事にやりがいを感じています。」

「文化は宇宙にも届く」――文化/芸術と科学の融合を目指して

文化/芸術と宇宙。一見すると離れた分野に見える二つですが、実はつながりもあるという上田さん。
「近い将来、人類が月や火星に進出するとき、そこには必ずファッションをはじめとした新しい文化/芸術が生まれます。そうした世界で、文化/芸術の未踏の可能性を考えられたら素敵だなと思っています。」
「上空400kmを飛ぶ国際宇宙ステーションでは、すでに人が住んでいます。そこでは気軽に水を使ってシャワーが浴びられる環境ではありませんので、宇宙飛行士が着る服は、通常の我々の着る服より匂いが出にくく、吸湿性に優れたものにしようとアパレルメーカーと協働で研究されており、実用化もされています。」
また、上田さんの就職活動中に、JAXAと日本のファッションブランドが、月面を模した空間でファッションショーを実施し、これが上田さんの宇宙への興味を決定づけたそうです。

哲学的視点からみつめたファッション

大学では、ファッションの文化的盗用について研究されていたという上田さん。
「高校時代から服が好きで。服をまとうことで、ふわっと気分が良くなったり、ぐっと強い気持ちになれたり、まとうことで自分が変化する感覚がありました。そこから、大学ではファッションについて学んでみたい!と思うようになりました。」
「外国の方が着物を着て、ファッション雑誌の表紙を飾った…というような場合、文化的盗用に関する議論がよくなされます。私は、その文化的盗用に美学的な価値が認められるか?という研究をしていました。人類が宇宙に進出するなかで、様々な文化が融合/誕生していくと思います。その過程で、地上の各文化をどう捉え直し、守り、融合していくかを考えるのも面白いなと思います。」

洛星で学んだ「自由」と「責任」

洛星での6年間を振り返ると、特に印象に残っているのは授業での雑談や恩師の言葉だといいます。
「授業の内容もそうですが、知的好奇心を常に刺激してくれるような雑談があったことをよく覚えています。その中で、『自由って何かわかるか。自らを由(よし)とすることやぞ』という先生の言葉は今でも印象に残っています。自由には責任が伴うという意味を、今になって深く感じています。
国語の授業では『理想のかぐや姫を描く』という宿題が出たこともあり、授業で得た学びと自分の創造性を融合させるような宿題に取り組むのは、自分の頭で考える貴重な機会になったと考えています。」
また、英語の授業で「革靴を磨ける人になりなさい」と教わったことも印象的だったそうです。
「所作の美しさや品格を大切にする姿勢を、日常の中で自然に教えてもらっていました。」

「個性を尊ぶ」空気が育てた一歩踏み出す勇気

上田さんは中学時代に始めた津軽三味線の演奏を、個人の出し物として文化祭で披露するなど、洛星には自分の「好き」を形にしやすい環境があったと言います。
「洛星は個性を尊ぶというか、頑張っている人を馬鹿にせず、互いに面白がって、認め合う空気感があると思っています。『自らを由とする自由』、『自らの頭で考え抜くこと』、『個性を尊ぶ精神』、特にこの3つを洛星から教わりました。」
その経験が、今のキャリア選択にもつながっているといいます。
「より自由に、より個性を活かし、より社会に貢献できる場所はどこだろうか?というのを常に考えています。こうした姿勢は、洛星で育まれたものです。」

「自分の感情を大切にできる世界に」

最後に、上田さんは洛星について、ならびに、現在の仕事を通じて感じている思いをこう語ってくれました。
「世界には目を塞ぎたくなるような問題が山積していますが、人類みなが喜怒哀楽を自然に感じられる社会であってほしいなと思います。日々の小さな喜びや悩みなど、些細な感情を当たり前に享受できること自体が、ものすごく幸せだなと感じます。宇宙に関する研究開発は色々な人に影響を与えられる仕事だと思うので、少しでも仕事を通して理想の世界に近づいたらいいなと思います。」
洛星で育った自由な発想と探究心が、今、宇宙というフィールドで新しい光を放っています。

インタビュアー:事務局 田邊篤志