Profile
洛星中学校・高等学校を卒業後、医学部に進学。医師として最前線で研鑽を積む傍ら、洛星の同窓会活動「夏の集い」での先輩医師との出会いをきっかけに京都府医師会の活動に参画。2020年からのコロナ禍においては、京都府医師会 会長として、京都の医療崩壊を防ぐべく行政や大学病院との前例のない緊密な連携を主導した。
京都府医師会の会長を務める松井 道宣さんは、洛星中学校・高等学校の19期生です。医師という「人のために尽くすプロフェッショナル」として第一線で活躍し続ける背景には、洛星の宗教教育が育む奉仕の精神と、何事にも大らかに向き合える教育環境がありました。
京都の安心を足元から支える「医師会」という大きなチーム
一般的に「医師会」と聞いても、具体的にどのような活動をしている組織なのか、ピンとこない方も多いかもしれません。医師会とは一言で言えば、医師という専門職が集まって地域医療に貢献するための「職能団体」です。
私たちが日々行っている活動は多岐にわたります。京都の公衆衛生の向上をはじめ、京都の学校の校医として子どもたちの健康を守る仕組みを整えたり、産業医として働く人々の環境を整えたりすること。さらには、日々の診療だけでなく、病気を未然に防ぐための予防接種や、早期発見のための検診の仕組みづくりなど、地域全体の「総合的な健康の環境」を創り出しています。
医師一人ひとりが素晴らしい技術や知識を持っていても、個人の力でできることには限界があります。しかし、それがチームになり、さらに大きな力となることで、京都市全体、京都府全体の人々の命を守ることができる。その大きなチームの舵取りを行い、医師が社会に関われる場をシームレスに整えることこそが、医師会の役割なのです。
洛星の「宗教教育」が育む、医師としてのプロフェッショナリズム
私は、京都大学や京都府立医科大学の学生たちに講義をする機会を頂くことがあるのですが、そのたびに若い医学生にいつも伝えているのは「医師はプロフェッションである」ということです。
かつて中世ヨーロッパで生まれた「プロフェッション」という言葉は、聖職者、弁護士、そして医師を指していました。これらに共通するのは、「人のために尽くすことを、天地神明に誓う(Profession)職業」であるということです。神職は人々の「魂」を、弁護士は人々の「権利」を、そして医師は人々の「命」を預かります。どれも人間にとって最も大切なものを守る、崇高な使命を帯びた仕事です。
だからこそ医師には、絶え間ない学問への努力や厳しい試験をクリアする知性だけでなく、「他人のために尽くす奉仕の気持ち」が不可欠です。
実は、この姿勢は洛星が大切にしている教育そのものです。洛星の宗教教育の根底には、「人を愛すること」「人を大事にすること」「他人の価値観を理解すること」があります。相手の痛みに寄り添い、その人を大切に想う心。これこそが、医療人に求められるプロフェッショナリズムの根幹です。私は、洛星の卒業生こそが医師になり、社会を支える医師会の中核を担うべきだと強く信じています。
コロナ禍の危機から京都を救った、同級生たちの「奇跡の連携」
洛星で育まれる「輪」と「繋がり」の強さは、時に社会の大きな危機をも救います。それを最も強く実感したのが、2020年から始まった新型コロナウイルス感染症との闘いでした。未曾有の危機に直面した際、京都の医療・行政のトップに立っていた顔ぶれは、驚くべきものでした。
当時、京都府知事として陣頭指揮を執られていたのは、洛星の先輩である西脇隆俊知事。そして、京都府医師会の会長を務めていたのが私(19期)。さらに、京都の医療の砦である京都大学医学部附属病院の病院長・宮本享先生、京都府立医科大学附属病院の病院長・夜久均先生。なんと、私と両病院長の3人は、洛星の「19期の同級生」だったのです。
行政のトップ、地域医療のトップ、そして二大大学病院のトップが洛星の強固なネットワークで結ばれている——これはまさに、神様が京都に与えてくださった奇跡的なチャンスだと感じました。
通常であれば組織の壁や手続きに時間がかかるような状況であっても、一刻を争う事態の中、極めて風通し良くスピーディーに意思決定を行うことができました。この圧倒的な「足並みの揃い方」があったからこそ、京都は医療崩壊の危機を乗り越え、数多くの大切な命を救うことができたのです。卒業して何十年経っても、洛星の絆は変わらずに続いている。今でもそれを強く感じます。
「のびのびと過ごせる環境」と多面的な経験が作ってくれた土台
洛星の最大の魅力は、生徒たちが「のびのびと過ごせる環境」にあります。私自身も、多感な中高時代をこの素晴らしいキャンパスで、何に縛られることもなく大らかに過ごさせてもらいました。
在学中の思い出として今も思い出すのは、サッカー部での活動と共に、今も続く伝統行事「合唱コンクール」です。合唱は、自分のパートを責任持って歌いながら、同時に他のパートの声にも耳を澄まさなければなりません。自分が頑張るべき時、あえて一歩引いて他を生かす時。この絶妙なバランスは、現代社会や、チーム医療の現場でも最も求められる能力だと思います。
サッカー部での活動や、先生方との自然な距離感、そして勉強一辺倒ではない「のびのびと過ごせる環境」。在学時には意識していなかったことでも、こうした6年間の多面的な経験が種となり、偏差値という物差しでは測れない「人間としての土台」を洛星が作ってくれたと実感しています。
洛星・未来の医療人を志す受験生・保護者の皆様へ
昨今、偏差値が高いから、高収入で安定した職業だから、という理由だけで医学部を目指すケースも少なくありません。しかし、これまでお話しした通り、医師とは「人の命、そしてその人を取り巻く人々の人生」を預かる、非常に重く、同時にこの上なくやりがいのあるプロフェッショナルな職業です。
どうか医師を志す皆さんには、「ただ勉強ができるから」ではなく、「人の命を大切にしたい」「社会のためにこの命を使いたい」という熱い想いを持って、医師の道を志してほしいと願っています。
洛星には、その医師の道を志す高い意思を受け止め、学力のみならず「他人のために尽くす奉仕の気持ち」を育てる教育機会、豊かな人間性を育む「のびのびと過ごせる教育環境」があります。そして、一歩社会に出たときには、あなたを全力で支え、共に社会の危機に立ち向かってくれる最高の先輩と仲間たちが待っています。
最後に、今、目の前にある面白いこと、やるべきことに一生懸命取り組んでください。1日1日を大切に過ごした経験が、必ず将来の自信に繋がります。
インタビュアー:事務局 田邊篤志